愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様

「とっ、父さん、なんで、こんなことすんの?」
 痛すぎて、声を出すのも一苦労だ。
「わからないのか? 俺は今、本気でお前を殺そうとしてるんだよ」
「……なんで?」
「お前が悲鳴を上げたせいで、虐待がバレだからだよ。このまま生かしてたら、俺がお前の友達に通報されかねないだろ。だから、そうなる前にお前を車道に連れてって、車に轢かせて事故に見せかける。本当はお前がもっと弱ってから殺すつもりだったんだけどな」
 そう言うと、父さんは足を俺の頬から、鎖骨に移動させた。

 目の前にいるこの男は父親ではなく殺人鬼なのではないかと思った。

 実の息子を殺そうとしてる上にそんな馬鹿げたことをしようとしてるなんて、とても信じられない。

「……父さん、そんなやり方しても、いつかバレるよ?」
 火傷した鎖骨を、容赦なく蹴られた。

「うっ」
 俺は悲鳴を上げている鎖骨を無理に使い、父さんの身体を両手で押した。

「いーや、バレない。だって故意なのなんて、お前しか知らないんだからな!!」
 父さんは俺の両手を片手で、ひとまとめにつかんだ。

「抵抗するな。死んでくれよ、海里。お前が死んでくれれば、その保険金で俺と母さんはもっと裕福に暮らせる。もっとちゃんとやっていけるようになるんだよ。だから海里、俺のために死んでくれ。それがおまえができる一番の親孝行だよ」

 親孝行って、子が親を敬い、親に尽くすことだっけ? 俺がそれをする手段が死ぬことだっていってるのか? 

 ……なんだよそれ。すげぇめちゃくちゃだな。

 今更か。そもそも親が子供に虐待をする時点でだいぶめちゃくちゃだ。

「うっ。本当に、殺すの?」
 腹を足で踏まれた。
 うめき声を漏らしながら問うと、父さんは顔を歪ませて笑った。
「〝殺すの?〟か。まるで死ぬのが嫌みたいなセリフだな。よかったじゃないか、やっと死ぬことができるんだから。それともまさか本当に死ぬのが嫌なのか? だからあんなに反抗してたのか? それならやっぱり、殺す前にちゃんと、抵抗できなくなるまで痛めつけなきゃだな」
 そう言うと、父さんは地べたに落ちていたぬいぐるみで俺の口を塞いで、俺の頭を壁に叩きつけた。
 頭が猛烈な痛みに襲われた。声を出せたら、絶対叫んでいた。

 激痛に悶えて顔を歪める俺を見て、父さんは二ヤっと、悪魔のように笑った。

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