わたしが最愛の薔薇になるまで
「すみません、私には刺激が強くて……」
「こちらこそ、気を遣わずに失礼しました。これだから独り身はいけない。仕事が順調でも自信を持てずにいるのは、伴侶に恵まれないからですよ。あなたのような美しい方を妻に持つ殿方が羨ましい」
「いえ、私は……」

 夫を亡くしていると伝えようか迷っていると、外商部の担当が駆けつけた。
 彼は、紳士に支えられた私を見るなり、謝るより先に破顔する。

「お似合いです。その方こそ、垣之内様に逢いたいと所望なさっていた、葉室(はむろ)様でございます」
「え……?」

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