わたしが最愛の薔薇になるまで
 私が顔を上げると、端正な顔立ちが間近にあった。甘い蜜のように潤んだ瞳と視線があって、ドキリと心臓がなる。
 蕾と咲ではない男性の顔を、こんなに近くで見た経験は久しくなかったから。

 担当から改めて相手を紹介され、純喫茶に入って会話をするうちに、私の気持ちは決まった。葉室が多忙だったので、それからは手紙を数回やりとりした。
 蕾と咲に伝えたのは、食事会場を押えたという連絡が来たその晩のこと。

「再婚しようと思うの」

 大切な双子の未来のために、私が出来ることはこのくらいしかない。
< 12 / 50 >

この作品をシェア

pagetop