わたしが最愛の薔薇になるまで

中編

 顔合わせは、料亭が入った市中の高級ホテルで行われた。

 貸し切った個室で、私と葉室、蕾と咲が同じテーブルに着いての食事会である。年齢的なものなのか、葉室側の家族はいなかった。

「お二人とも一高とは。素晴らしいですね」

 艶のあるクラヴァットを締めた葉室は、双子の制服を見て目を細めた。
 ナンバー校は、帝大に進学するための予科と位置づけられており、試験は難関だ。蕾と咲は、私と違って勉学が出来るので一発合格だった。

「お褒めいただいて恐縮ですわ。二人とも自慢の息子です」
「誉れでしょうとも。ですが、一高は皆寄宿制度がありますよね。息子さんと離れ離れでお寂しくありませんか?」

「蕾と咲は自宅から通学しておりますの。私を一人にするのは忍びないと、学長に掛けあってくれたのです」
「優しいんだね、二人とも?」

「「…………」」

< 13 / 50 >

この作品をシェア

pagetop