わたしが最愛の薔薇になるまで
 垣之内邸の大広間に設えられた高砂に、私は葉室と座っていた。
 私にとっては再婚だが、葉室は初婚のため、馴染みの呉服商に勧められた打ち掛けをまとった。
 薔薇の刺繍が施されており、紋付き羽織袴の葉室と並ぶと、黒い土から伸びた花が咲いているように見える、晴れやかな舞台に似合いのよい着物だ。

 蕾と咲が素直に出席するか心配だったが、親族があつまるテーブルで大人しく進行を見守ってくれた。
 来賓である政治家や実業家のご令嬢が、二人に熱い視線を送っていたが、そちらには目もくれない。ただひたすら、私の方を見ている。

 怒っているのか。それとも、悲しんでいるのか。
 披露宴が終わったら、私から話をしよう。

 葉室と幸せになるから、安心して自分の将来について考えてほしい、と――。

「――子さん、薔子さん」
「っ、なんでしょう?」

< 38 / 50 >

この作品をシェア

pagetop