わたしが最愛の薔薇になるまで
◆◆◆◆◆
令和初頭、関東某所。
かつて豪商として名を馳せた垣之内氏の住まい、旧垣之内邸の広大な庭には、二千種を超える薔薇が咲き誇って、観光客の目を喜ばせていた。
種類が充実しているのは、西洋から取り寄せた種子を育てたためである。
薔薇は、挿し木で増やさなければ、元の木とは違う花を付ける。そのため、ここでは色や花びらの重なりが異なる薔薇が、次々と生まれたのだ。
中でも、最も美しいと言われているのが、庭の中央に咲いている赤い大輪。
これには、垣之内家の最後の当主であった双子の逸話がある。
二人は、庭でもっとも美しく咲いたこの薔薇に、若くして亡くなった母にちなんで『薔子』と名づけ、生涯にわたって大切に育てた。
『薔子』は、不思議なことに、株を別けても、挿し木をしても、この垣之内邸でしか蕾をつけなかった。
ここでしか生きられない薔薇を、双子は、心から愛していたという。
令和初頭、関東某所。
かつて豪商として名を馳せた垣之内氏の住まい、旧垣之内邸の広大な庭には、二千種を超える薔薇が咲き誇って、観光客の目を喜ばせていた。
種類が充実しているのは、西洋から取り寄せた種子を育てたためである。
薔薇は、挿し木で増やさなければ、元の木とは違う花を付ける。そのため、ここでは色や花びらの重なりが異なる薔薇が、次々と生まれたのだ。
中でも、最も美しいと言われているのが、庭の中央に咲いている赤い大輪。
これには、垣之内家の最後の当主であった双子の逸話がある。
二人は、庭でもっとも美しく咲いたこの薔薇に、若くして亡くなった母にちなんで『薔子』と名づけ、生涯にわたって大切に育てた。
『薔子』は、不思議なことに、株を別けても、挿し木をしても、この垣之内邸でしか蕾をつけなかった。
ここでしか生きられない薔薇を、双子は、心から愛していたという。


