七夕の夜、二人で見上げた星空
9.七夕の夜、二人で見上げた星空

「よっ!」


 二週間もたたないうちに、夏服姿の瀬戸くんが顔を見せた。


「いや、まいったぜ!でも、ギリギリで退学にならなかった!」


 昼休み、とつぜん姿を見せたかと思えば、悪びれた様子もなく私に向かって淡々と話す。

 よかった~、なんて喜んでいたのもつかの間、早瀬さんが怒りを押し殺して歩み寄ってきた。


「瀬戸先輩、すいません」


「なんだよ、いきなり」


「学年のちがう生徒は、この教室に出入り禁止になったんです」


「マジで!本当か?」


 そんなの初耳で、私もビックリしてる。

 早瀬さんの気持ちも知らないで、涼しい顔で姿を見せたから怒ってるんだと思う。

 なんて、私から言えないし……


「それより、宇佐に頼みがあるんだ」


「えっ、なんでしょう?」


「今度の週末、地域のボランティア活動をしないといけねえんだ」


「あっ、それが条件で停学を短くしてくれたの?」


「その通り!でも、同伴で監視役が必要なんだと。俺がサボるからだってよ」


「それで私なの……」


「みんなに嫌われてるみたいでよ、宇佐しか頼れるやついね~んだ」


「いいですけど……」


「じゃあ決まり、七夕祭りの会場で合おうぜ!」


「えっ、七夕祭り?そうなんですか!」


 私の言葉を聞こうともしないで、一方的に話す瀬戸くんは教室を出ていった。

 週末は、この地域で毎年開催されてる大きな七夕祭りの日。

 道路を通行止めにして飾り付けをするため、土曜の朝から集中的に作業するはず。

 たくさんの人手が必要で、瀬戸くんもボランティアで活動する見返りとして、停学期間を短くしてもらえたのだろう。


「わたしがやるって言ったのに……宇佐さん、嫌でも行くって瀬戸先輩に伝えといてくれる……」


 どうやら早瀬さんの話を断って、私に声をかけてきたようだ。

 でも、瀬戸くんと早瀬さん、そんなに親しい関係なのかな?



 疑問に思いながら、当日の朝を迎えてしまう……




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