七夕の夜、二人で見上げた星空

 週末、土曜日の朝がやってきた。


 学校で瀬戸くんと待ち合わせをして、一緒に会場へ向かう。

 歩きながら話をしてたけど、中学生の時みたいな殺伐とした雰囲気はない。

 中学卒業と同時に暴走族は引退して今はおとなしくしてるけど、売られた喧嘩は買う主義のようだ。


 私たちは学校指定のジャージを着てる。

 暑さに弱い私はTシャツ姿。

 瀬戸くんが水色のジャージを着てるけど、ビックリするぐらい似合ってない。


 会場につくと、さっそく実行委員の人たちから飾り付けの仕事をお願いされた。

 高い所の飾り付けは男性が作業して、下で小物などの受け渡しを私がサポートする。

 夕方までには完成させる予定だけど、ちょっと作業は遅れてるらしい。


「いつも見てるだけですけど、準備するって大変ですね」


「俺もう疲れた~、たこ焼き食いて~」


 ブツブツ文句を言いながら、瀬戸くんは仕事をこなしていく。

 最後の飾り付けが終わった頃には、すっかり日が暮れて辺りは薄暗くなっていた。


「無事に終了です!明日の撤収は、三時からになります!」


 実行委員の人が声を張り上げてる。

 ここは普段、車が走る道路なので明日の五時には撤収を完了させるようだ。

 この地域は今日が七夕の前夜祭で、明日は本祭り。

 今夜は盛大に花火も打ち上がるので、見物客も多くなってきた。


「晴れてよかったな、花火も綺麗に見えるぞ!」


「ほんとうですね、梅雨の晴れ間は貴重です!」


「もうちょっとで始まるみたいだ、よかったら一緒に見ていこうぜ!」


「えっ、いいの!うれしい!」


 思わぬ展開、瀬戸くんと二人きりで花火がみれる。

 可愛い浴衣を着たかったけど、今はお互いに学校指定のジャージ姿。


 格好よりも、一緒に思い出を作れることのほうがうれしい……




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