七夕の夜、二人で見上げた星空

 髪を綺麗にまとめた、浴衣姿の早瀬さんが目の前にいる……


 私は思わず、瀬戸くんと離れて距離をとった。

 いつものクールな表情だけど、メガネをはずした姿はいつもより大人っぽくて美人に見える。

 コンタクトレンズを付け、メイクをした顔の表情も見惚れてしまう。


「こんなところまで、しつこいな……」


「わたしがなんとかするから、つき合ってほしいの!彼氏になってよ!」


 言い争いをする二人だけど、急展開すぎて私の頭は混乱してる。


「むりだって言ってるだろ、あきらめろ!」


「お兄ちゃんじゃダメなのよ、アナタと恋人になりたいの!」


「俺たちが兄妹になるのは、時間の問題だ……」


「嫌よそんなの、兄妹だったら結婚できない!アナタのことが好きなの、ずっと瀬戸先輩でいてよ!」


「悪いけど、俺はそのうち……名字が早瀬に変わるらしい……」


「もう、籍を入れてしまったの!」


「らしいぜ……」


「そうだったのね……」


 私は黙って聞くことしかできない。

 二人の関係は、だいたい理解できた。

 早瀬さんと瀬戸くんは、どう頑張っても恋人同士の関係にはなれない……


 その時、最後の連続花火が打ち上がった!

 夜空一面が花火で覆い尽くされ、音も凄くて体に響く。

 思わず見上げた連続花火に視線を奪われ、私と瀬戸くんは放心状態。

 最後の大きな花火が打ち上がり、寂しいけど終了。


 私が視線を前に戻すと、早瀬さんの姿はどこにもなかった……




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