私の婚約者には好きな人がいる
鍵のある場所を目で追いながら、静代さんの動きを一日中観察していた。
鍵はエプロンのポケットに入れてあり、私が鍵を狙っているとは思いもしないようだった。
ずっと従順に高辻の家で暮らしてきた私がお父様やお兄様に反抗するとはだれも考えない。
相手は油断しているはずだった。
手に入れる機会はそんなにない。
多分、油断しているのは大人しくしている間だけだろうから。
失敗すれば、二度目はないこともわかっている。
閉じ込められて二日目の夜が過ぎて行った――――
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