私の婚約者には好きな人がいる
「いいえ。ご立派だと思います。皆さんの見えないところでお仕事されるなんて、なかなかできることではないと思います」

「りっ、立派だなんてこと、そんなことはっ。え、えーと。高辻さんはお嬢様なのに仕事を覚えるの早いですよね。昨日、僕と一度しかお茶とコーヒーいれてないのに手順も全員のカップも完璧に記憶してしまって……そのぅ、優秀ですよっ!」

「ありがとうございます。でも、閑井さんの教え方がお上手なんだと思います」

「そ、そうかな?い、いや!?そんなことは!高辻さん!お茶っ、お茶でも飲みましょうか!」

お湯が沸き、まだ誰もこないので、まったりと二人でお茶を飲んでいると、他の人が出勤し始めた。
その方達のお茶もいれて、朝の仕事が始まる。
これが、会社の朝の空気というものなのね。
感動しながら、それを眺めた。
午前の仕事は昨日より、ちょっとランクアップして、資料のコピーを任され、コピー機を使う仕事をさせてもらえたことが嬉しかった。
憧れのコピー機。
ここに立っているだけで会社員になった気分になれる。
なんて、素敵な仕事でしょうか。
うっとりとしながら、コピーのボタンを押した。

「ふふっ。ドラマみたいです」

会社で働いているという、実感があり、とても楽しかった。
午後からも大量のコピーを任されて、それをコピーしていると、閑井さんがやってきた。

「高辻さん。給紙は大丈夫ですか?」

「ええ。こちらにマニュアルが置いてありましたから、読ませて頂きました」

「仕事がコピーばかりですみません。そろそろ飽きたりしませんか?」
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