私の婚約者には好きな人がいる
「いいえ。素敵なお仕事だと思います!」

「す、素敵ですか?素敵かなぁ……?」

閑井さんが首をかしげていたけれど、今の所は楽しくコピーをしていた。
閑井さんは終わったものを運ぶフロアごとにわけたけれど、多すぎて持てずにいた。

「よろしければ、私も一緒に運びましょうか?」

「だ、だめですよ」

「閑井さんだけでは大変でしょうから」

閑井さんの持ちきれなかった分を持ち、営業部に行くと、社員の人達がおしゃべりをしていた。

「専務から、婚約の話はお断りできないでしょうね」

「高辻は大きなグループだからね。本気になれば、清永商事が受注したものなんか、横取りだってできるんじゃないか」

「高辻の常務はやり手だよ。専務が婚約しているから、清永商事に仕事を譲ってくれている所もあるからなあ」

「それにしても、あのお嬢様。馬鹿みたいよね。今日はずっとコピーしていたわよ」

「みんなが持ってくる全部のコピーをしていたからな」

「なにも知らないでね」

声をたてて笑っていた。
それが私のことだとすぐにわかったけれど―――
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