私の婚約者には好きな人がいる
両手を合わせて、中井さんは頼むと行ってしまった。
困った顔で机の上に置かれた仕事を見つめている。

「あの、閑井さん。今日の雑用は私がやりますから」

「ありがとうございます!」

「いえ、たいしたことできませんけど」

お茶のカップを洗ってから、コピー機の所で作業をしていると、ざわざわとフロアの方が騒がしくなったことに気づいた。

「高辻グループの常務よ!」

「嘘!恭士様がいらしたわよ!」

女子社員が集まり、あっという間にフロアが人でごったがえした。

「恭士お兄様!」

なぜ!?ここに?
涼しい顔で現れた兄は清永の部長や重役達に囲まれていた。

「咲妃の仕事ぶりを見に来たのと、惟月君に挨拶にきたんだ」

「惟月さんに!?」

何を話すというのだろう。
恭士お兄様が来たのと同時に清永のおじ様が駆けつけてきた。

「恭士君!いやあ。久しぶりだね」

「ご無沙汰しております。咲妃がお世話になっているので、ご挨拶に参りました」
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