おもいでにかわるまで
その夜、聖也は練習前に突如発生したドッチボールの事を思い出しては笑いを堪え、家族と夕飯を取っていた。

そして下のきょうだい達が先に食卓から離れると、今日は早く帰宅している父親が話し掛けてきた。

「来週から学校か?」

「うん。」

「お前の事で心配はないけど、夏には受験だな。本命は決めたのか。」

「附属の大学に・・・行くかもしれない。」

「まあ悪くはないよ。伝統ある良い大学だ。」

「だよね。それか父さんの勤める大学に行くとか。」

「それは好きにしろ。ところで・・・お前彼女いるのか。」

本題はこれか、と聖也は思った。

「ああ・・・。」

「バイト先か?同じ学校か?」

「学校・・・。後輩だけどね・・・。もういい?」

「聖也、お前は出来た長男だと思うよ。でも自分の可能性を先に決めない方がいい。」

「どういう意味?」

「いつか本当に何かしたいと思った時に、役に立つ事が必ずある。だから目指せるだけ目指しなさい。上の大学を。」

「わかってるよ・・・。」

聖也はキッチンに行き冷凍庫の扉を開け、氷を口に乱暴に投げ入れた。そしてガリッガリッと奥歯で噛み砕きながら自室に戻った。

女の事なんて今まで口を挟んで来なかったくせに、ここへ来て急に外野共がうるさい。と聖也はイライラした。

確かに聖也は受験の為の英語のテストを今月2つも控えていた。父親は何も見ていないようで見ているのだ。その上で聖也が今、彼女の事しか頭にない事を指摘したかったのだ。

今まで恋愛をしても成績が下がる事はなかったけれど、父親の心配する気持ちも十分にわかっている。これからは空き時間は全て受験勉強に費やさなければいけない。

そう、ちゃんとしなきゃ。そしてこれは水樹のよく言う口癖だった。

ふっ、ちゃんとって何だよバカヤロー。聖也は鼻で笑った。

聖也にだってちゃんとしなければならない時がある。そして父親と話した事により、聖也の心に新しい変化が生まれたりしたのだろうか。

ここで聖也は大きな掛けに出る。

何かがわかる、何かが変わる。そんな日曜日の訪れを待つ聖也の気持ちとして、期待と不安、どちらでいる事が正しいのだろうか。
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