おもいでにかわるまで
次の日、水樹は早速お昼休みに部長の教室まで入部届けを提出しに行った。

5年生は皆大人で、1年生の水樹には非常に居心地も悪く、だから勇利が書いた入部届けを手早く渡すと、逃げるように5年生の教室から走り去った。

ドキドキしたけれどこれで本当に入部したんだ、と気合も入ったような気がした。それから、皆の為に頑張って一緒に全国大会に行く、とも誓ったのだった。

そして5年生のいる棟から自分の棟に戻り、その勢いのまま廊下を曲がろうとした時だった。

ドンッ。水樹は尻餅をついた。

「いたっ。」

「あーごめん、ぼっとしてて。大丈夫?」

「明人お前気をつけろよーこの子ふっとんでるじゃん!ほら、立てるか?」

「はい、慌てていて上の空で私の不注意ですすみません。」

ぶつかった本人ではなくその友達が差し伸べた手を握り水樹はさっと起き上がると‘これからは気を付けます失礼しますっ。’と言いながらまた駆け足でその場を去った。

ぶつかった人とその友達の顔もろくに見なかったけれど、ぶつかった人、‘明人’はなんとなく無表情で怖いな、と水樹は感じたのだった。

そして、水樹が走り去った後に残された二人組はあ然としていた。

「明人明人、今の子1年かな?超かわいくなかった?しかも超早口でまじうける。」

「そうなの?あんま見てなかった・・・。」

「お前ほんと何にでも無関心だな。もしかして、ゲイなの?」

「はっ!?」

「まじごめん。お前の気持ちには応えられない。」

明人は返事をせずに無視をした。

「もしあの子が明日、俺にお礼のクッキーでも持ってきたらどうしようー。」

明人は返事をせずにダジャレも無視をした。

「誠と少女の恋の物語、第二章、やべー。」

第一章はどこいったんだよっ。と突っ込むような性格の明人ではないし、水樹が翌日に堀田誠にクッキーを焼いてくる事はもちろんないのだけれど、水樹と明人、二人の最初の出会いはここにあったのだった。
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