おもいでにかわるまで
「正木、いけるか。」

「明日病院行けよ。」

「1、2、3年は先生と先に帰ったよ。」

先輩達も泣き腫らした目をしていた。

「地元に帰ったら飯行って打ち上げするから早くお前も着替えろよ。」

「聖也、着替え手伝おっか?」

「お願いしよっかな・・・。」

「まじやばいって。涼宮のボケを拾わないなんて聖也超重症だよ!」

先輩達が笑っているのに、聖也はまた目に涙を溜めてしまった。

「あのさー、一言だけいい?聖也さー、お前4年だろ?来年あんだろ?俺らより目立ってかっこよく泣くの止めてくれない?」

「それな!負けたのは俺らの力不足で聖也のせいじゃないから、逆にここまでやれてありがとうしかないわ。」

「俺、大学行ってもハンドボールやるよ。」

「とりあえず帰ったら海行こうぜ。」

「初めてビキニ着てみよっかな。」

またボケた夏子は確かに前よりもかなり痩せて綺麗になっていた。足首や腰が痛むと整骨院の先生に相談した所、体重のせいだから痩せろと指導されたらしい。

そして聖也は夏子のビキニ姿を念の為に想像してみた。

が、何も起こらなかった。

でも部屋から出ていく聖也は笑っていた。

そして地元に帰ったこの夜は、先輩達とご飯を食べ、飲める者は酒を飲み、グダグダに酔って皆で泣いた。

良い思い出と苦い思い出とが全部まとまったこの夏の青春を聖也は忘れない。

そして大人になっても何度も何度も集まってはビールを飲んで、また誰かが語り出し慰め合い、同じ話で結局泣いて、最後は笑っているんだろう、と、聖也は思う。
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