おもいでにかわるまで
「俺今からそっち行くわ。」

「大丈夫だから別にいいよ。」

「大丈夫じゃねーだろ、じゃあ切るぞ?」

「来なくていいってば。それに騒がしいから今外でしょ。誰かと一緒じゃないの?先輩達?あ、もしかして彼女?」

実はまだ勇利には水樹との関係を言いそびれていた。でもそれは、自分より水樹のタイミングを計っていた、という方が正しい。

「ああ。彼女と一緒なんだけど最初から直ぐ帰るつもりだったから。」

「まじで!?冗談で言ったんだけど邪魔してごめんね。それにしても今度はどこで見つけたの?俺にもそのモテテク教えて欲しいよ。」

そして聖也は今このやってきたタイミングで水樹との事を勇利に話す事にした。本当は誰かに隠さなければ成り立たない関係なんて、男らしい聖也にあるわけないのだ。

「お前の知ってる()だよ。」

「まじ!?うーん、涼宮夏子先輩とか?」

「ちげーよ。あのな、俺、水樹と付き合ってる。」

言った。そして視線の先の水樹は下を向いた。

「まじっ!?」

「まあ。」

「そ、そうなんだ・・・。全然気が付かなかったよ。なーんだ、はは、やっぱりロリコンなんじゃん。」

「言うと思った。やっぱり今から秒で行ってお前締め上げる。待っとけよ。んじゃあ切るな。」

聖也は電話を切り今から勇利の所に行く事を水樹に説明した。

「ごめん。一旦帰ってバイクで勇利の家行くわ。」

「宇野さんと連絡が取れて良かったです。」

「あいつ、女と別れたんだって。」

「えっ!?」

「今は笑ってたけど1年の頃からどれくらいその娘を好きだったか知ってるから俺心配なんだ。」

「そう、なんですね・・・。わかりました・・・。」

「うん。」

「あのっ・・・正木さん。いつも大事にしてくれてありがとうございます。私、幸せです。えっと、それで、その、だから宇野さんの事、お願いします・・・。」

「おう。」

聖也は優しい眼差しを水樹に注いだ。

ただ、嬉しさもあるけれどどことなく違和感もある。それに、今言う事なのだろうかと思った。でも水樹が緊張していない話し方だったので嘘ではないとわかった。

「ふっ。急にどした?大丈夫、ちゃんとわかってるから。ほら行くぞ。」

聖也は水樹の手を引っ張った。水樹はそのまま聖也の手を弱く掴んで別れの場所まで歩いた。
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