仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
『遠距離は我慢できるけど、婚約解消は我慢できない』
『なによそれ、もう。風雅、真面目に付き合える子いないの? あんた顔だけはめちゃくちゃいいんだから、誰かいるでしょ?』
『希帆と付き合ってるから、他と付き合ったら浮気でしょ』
『私はいいんだってば!』

風雅の論理はわけがわからなかった。風雅が私を好きなはずがない。
好きな相手なら、年に一二度会えるだけでいいってことはない。キスやハグ、それ以上だってしたいに決まってる。相手が遠い地で就職し、戻ってこないかもと言ったら、こんなに簡単に納得しない。
風雅の求める婚約関係は、形ばかりのものとしか思えなかった。そんな関係に執着されても、私だって本気には取れない。

だけど、まあいい。婚約者サマがそういうならお言葉に甘えてやろうじゃないの。私は風雅の言葉を盾に両親を説得した。
そうして、すでに愛着の沸いた土地での暮らしを再スタートさせたのだった。


それから数年、私は完全にフリーランスとなり、台北市での生活を安定させていた。
二十八歳になったばかりのこの春、風雅から連絡があるまで。


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