仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「な、なんか風雅のその話初めて聞いたかも」
「別段、話すことでもないでしょ? あ、ちなみに希帆と同じ高校に入ったのも、学校が家から近い方がいいなって思ったんだよ。親父の身体的にも弟のメンタル的にも、俺がすぐに動けた方が都合がよかったんだ」

風雅は自分のパンケーキをぱくぱくと口に運び、私を見てにーっと笑った。

「そのおかげで希帆と会えたから、俺たちってやっぱり運命だよね」
「何、こじつけてんの?」

私の厳しめの返答もまったく堪えていない様子。楽しそうに自分の分の食事をたいらげていく。

「ねえ、婚姻届出していい?」

不意に言われ、私はどきりとした。

「お互いの仕事とうちの親父の病気の関係で、結婚式はしない予定でしょ? 婚姻届けが俺たちの結婚の区切りになる。本当に出しちゃっていい?」

昨晩の出来事が脳裏をよぎった。私を押し倒して見下ろしてきた風雅。男らしくて、見たこともないような顔で……打ち消すようにじろりと風雅を睨む。

「昨日みたいなことがあると困るんですけど」
「希帆はやっぱり俺とセックスしたくない?」
「私はまだ仮面夫婦案、捨ててないから」

いつものにっこり笑顔はふざけているのか本気なのかまったくわからない。そもそもこの男の本気はどこにあるのだろう。
高校時代、成績はいつもトップクラスだったのに、一番は目指さなかった。体育や体育祭ではめちゃくちゃに活躍するのに、部活は入らなかった。たぶんこれは、家の事情じゃなくて本人の性格。いつも飄々としていて本気が見えないのだ。
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