仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「たくさん食べて」

向かいの席でにっこり笑う風雅。うう、朝陽に照らされた美形男子が、完璧な朝食を設えて提供してくる。風雅とは慣れ親しみ過ぎているけれど、顔だけはいつ見ても完璧に整っていると思うし、こういったシチュエーションは初めてなので、計らずもドキドキしてしまった。

「パンケーキ、ふわふわ」
「卵白泡立てるとこうなるんだ。お店みたいに甘いバターも作ろうかと思ったけど、他にも品数あるからくどいかなあってやめた」

でも、生クリームは泡立てたわけだし、フルーツは切ったわけだ。手間がかかっている。ぱくりとひと口パンケーキをはこび、思わず「んむむ」と唸ってしまった。

「おっ……いしい! 風雅すごい!」
「でしょ。もっと褒めてくれていいよ」
「すごいね、こんなの作れるなんて。っていうか、風雅って料理できたんだ」
「俺が小六の時母親が病気で死んで、親父も翌年倒れちゃったからさぁ。弟も三つ下だし、料理とか洗濯とか中学から割と俺がやってたよ。弟が俺の料理食いたがるんだ」

思わず驚いて風雅の顔を見つめてしまった。お母さんを早くに亡くしていることは高校時代に聞いていたけど、風雅がそこまでやっていたなんて。

「いや~、親父が最初に倒れたとき、中一でさ。その頃ハウスキーパーも雇ってなくて、親父は緊急手術で、会社はてんやわんやで。俺と弟、何日か家で放置状態だったんだよね。手持ちの金もなくなって、親父の容体も病院すらわかんなくて。結局親父の友達が地方から出てきてくれて、ひと月以上俺たちの面倒見てくれたんだよね。飯作って、会社の方も手伝ってくれて。あの時思ったね。ガキだからって甘えてないで、自分である程度なんでもできないと駄目だなって」
< 28 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop