仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「それじゃあ、あと二週間後ね。うちに寄りなさい。ごはん食べましょう」
「楽しみにしてる。おばあちゃんに大腸の煮込みをリクエストしておいて」
「了解。あと当分台湾にいるなら、仕事、詰めちゃうわよ」
「ええ、お願い」

そこまで言った時だ。画面がぶつんと切られた。私はもう一台のPCを注視していて、美芳も手元の仕事を片付けながらの通話だ。画面がブラックアウトした瞬間はどちらも見ていない。
音声だけがスピーカーから聞こえる。

「キホ?」

美芳が私を呼ぶ。私は動けない。背後から風雅に抱きすくめられていた。

風雅……いつの間に帰っていたの?
というか、セクハラですが!

焦りと怒りで、風雅の腕を振りほどこうとする。しかし、思いの外強い力で抜け出せない。

「キホ、どうかした?」
「美芳、ごめんなさい。PCのカメラの調子が悪いみたい」

風雅の腕の中で必死に足掻きながら私は言った。

「ごめん、今日はもう切るね」
「いいわよ。またね。二週間後、待ってるわ」

美芳との通話が切れる。私は溜めていた数秒分の怒りのままに風雅の腕の中で怒鳴った。

「離して!」

じたばた暴れるけれど、いかんせん体格差が大きい。
風雅の腕は外れない。どころか風雅は私を抱えると、そのままソファへ。立ち膝の格好の私を、膝に乗せ抱き締めてきた。
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