クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「あの…本当に順調って言えるんでしょうか…」
「うん?」
「専務秘書は少ない方と聞いています。私も、早くもっと色んなことを覚えなきゃいけないのでは…」

おずおずと私が気にかかっていたことを言うと、亮子さんはあっけらかんと笑った。

「まだ始めて一週間も経ってないのに気が早いわよ、芽衣子ちゃん。焦りは禁物よ? それに、秘書が少ないのは仕方ないことだわ。もとはと言えば、たくさんいた秘書を雅己本人が解任してしまったのが原因なんだから」

その話は高田さんからも聞いた。
専務本人が、お母さまが選んだ秘書の方達を気に入らず辞めさせてしまった、と。

亮子さんはアイスコーヒーの氷をつつきながら、少し真面目な顔になって話し始めた。

「雅己は呉服問屋の跡取りだった代表取締役の一人息子というのは知られているけれど、実は父親がいないってことは知らないでしょ?」
「え…」

初めて聞いたことだった。
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