溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~
その両手首を掴んで、俺は芽衣子を拘束した。
ドクドクと、脈打っているのが手に伝わってくる。

「…どうしてこんなにドキドキしているの?」

どう返していいのか分からず、俯いてばかりいる芽衣子。代わりに手首だけが、ドクドクと雄弁に脈打っている。

強く抱き締め、キスをした。

華奢な身体、甘い香り、熱い体温。
やっと取り戻すことができた安堵と甘い甘い幸福に満たされながら、俺は誓う。

もうけして、離さない。

「愛しているよ、芽衣子」
「はい…」

真っ直ぐに見つめて伝える。
芽衣子は顔を真っ赤にしてどうにか微笑むと、あとは恥ずかしそうに俯いてしまう。
その火照った頬を撫でながら俺は囁いた。

「今すぐ、君をベッドに連れていきたい。けれど…こんなに幸せな夜を祝わないのは無粋だね。どうかな、これから食事でも」
「よろこんで…」
「もちろん、今夜は帰さないよ。いいね」
「はい…」

しかし芽衣子の目に少し戸惑いの色が走るのを見逃さない。
「どうしたの?」と囁くと、彼女はぎこちなく微笑んだ。

「私…こんなスーツでご一緒しても、大丈夫ですか?」

これはしたり、と俺は眉をひそめた。

俺はなんて未熟な男だ。
仕事着のまま彼女に祝いの席に着かせるなんて、令嬢に対して失礼極まりない所業だ。

「すまない、配慮が足りなくて。帰宅すれば服はあるのかな? 行くのは帝国ホテルの最上階だ。待っているよ」

芽衣子の顔に、安堵と喜びの表情が広がった。





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