溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~

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【芽衣子side】


予約してくれていたお店は、お母様が贔屓にしているお店だった。

「芽衣子さん、おひさしぶり! まぁ綺麗だわぁ! やはり私の見立て通りとてもお似合いね」

お母様は私に会うなり開口一番感激してくれた。

「ありがとうございます。素敵なお着物をいただきまして、本当にありがとうございました」
「帯は新調してくださったのねぇ」
「はい。雅己さんに贈っていただきました。あと、小物やかんざしまで…。こんな素敵な装いができるなんて、お母様と雅己さんには、感謝してもしきれません…」
「その美しい姿を拝見できただけで十分ですよ。きっと雅己も心底見惚れたことでしょうね。ふふ、感激したらますますお腹がすいたわ。さぁ早くいただきましょう」

和食のコース料理は、魚貝もお肉も趣向がこらされていて、味もとても美味しかった。
お母様との会話も、とてもよく弾んで楽しい。

…でも、私はどうしてもこのひと時に興じることができなかった。

やっぱり、父と新規事業のことが気掛かりだったからだ。

楽しく笑っていらっしゃるお母様は、このことを知った後もこうして懇意にしてくださるだろうか…。
もしかしたら、がっかりして、私を疎んじて、雅己さんと別れてほしいと考えを変えてしまうかもしれない…。

そう思うと不安と苦しみが膨らんできて、お母様の楽しそうな顔を見ているのが辛くなってきた。

「なんだか、さっきから上の空ねぇ」
「え…」

唐突に指摘されて、私は思わずびくりとなった。
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