溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~
「やっぱり、私みたいなおばさんと食事じゃ、つまらなかったかしら」
「そ、そんなことありません…!」
「本当に? ならいいのだけれど…」

微笑むと、お母様は箸を置いて私を真っ直ぐに見つめた。
がらりと変わった雰囲気に、私の背筋も自然と伸びる。

「芽衣子さん、何か気掛かりなことがあるんでしょう? 私でよければ話してくださらない?」

と言うお母様の穏やかな眼差しを受け止めて、私は直感した。

もしかしたら、お母様はすでに知っているのかもしれない―――。

私は意を決した。

「…私の父の名は岸武文と申します。国会議員を務めております。そして、雅己さんが今手掛けていらっしゃる新規事業にも、深く携わっております」

お母様の表情は変わらなかった。

やはり、知っていたんだ。

そう確信を抱いた私を見透かしたのか、お母様は深く頷いてみせた。

「私も知った時は驚きました。一目あなたとお会いした時から、とても育ちのよい方なのだろうと察しましたが、まさか、岸先生のお嬢様だったとは―――」

私は弱々しく微笑んで続けた。
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