クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~



だから、クラブで彼女を見かけた時は、運命の悪戯だと思った。

今ここでこの瞬間、彼女を手に入れなければ、俺は一生涯後悔することになる―――そんな雷に打たれたかのような衝動に突き動かされ、強引に彼女を連れ出した。

とりあえず向かったのは、馴染のバーだった。

あまり密室空間のような狭い店だとかえって彼女が緊張すると思い、オープンテラスから夜景を一望できる会員制の店に向かった。

カクテルを注文した彼女だったけれど、一口飲むなり一瞬眉根を寄せた様子からは飲み慣れていないことが伝わってきた。
そんな様もいじらしく感じるのと同時に、そこまで無理をして背伸びをしようとする彼女の懊悩を思うと悲しかった。

何が彼女をここまで追い詰めているのだろう。

傘を差し出してくれたあの穏やかで愛らしい笑顔からは、そんな様子はおくびも感じ取れなかったのに。

彼女の張りつめた心を少しでも解放してやりたくて、俺はテラスへ誘った。
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