Letter - 大切な人 -


 無言で見回していた美利に向かい彼が話しかける。

「お友達さんに選ばれたのはいいが、あごが痛ぇ…」

 謝るのを忘れていた。
 そう思った美利はすぐに声をかけた。

「ごめん、僕も頭痛いから、おあいこ」
「それ、おあいこって言うのか?」
「言う」

 有無を言わせない美利の口調に一瞬口元をひくつかせたが一応は納得したようだ。


 それじゃあ、と帰ろうとした美利に彼は言葉を続ける。

「ところで、どうしてお友達さんなんだ?」

 教室に入ろうとしたところで見知らぬ誰かに頭突きされ、その上お友達さん第一号と言われるなんて意味が不明すぎる。
 もっともな質問だろう。

「一番最初にぶつかったから」

 とりあえずの適当な理由が見つからなかったので思いついたことを伝えた美利だったが、彼はその言葉を聞いていなかったようだ。
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