追憶ソルシエール
「今もこうやってずっと喋ってるから絵が進まないんだよって?」
「それは、うん」
こくり、と正直に頷けば「世莉 生意気だー!」と擽られる。
話しながら描けばいいものの、那乃の手は進まないまま、口だけずっと動いている。
「わー、やめて! 那乃 絵終わらせるつもりないでしょー」
「あるけどー?」
「早く手動かしなって」
「だから手動かしてるんだけど!」
「うわ、そういう意味じゃなくて…!」
わかった私が負けた、と降参すれば那乃の手はピタ、と動きを止めた。
それでよし、と言わんばかりの笑顔に少し恐怖を覚える。
「さっさとデートしよって言いなよ」
「んー、わかった。明日言ってみる」
「明日!?」
ほら今、と促されポケットからスマホを取り出す。
文字を打っている間、ほんとマイペースなんだから、とブツブツと小言を言う那乃を睨もうかと思ったけれど図星だからなんもと言えない。
送信ボタンを押すと、美術の時間は残り5分ほどになっていた。