追憶ソルシエール
「世莉ちゃん」
「あ、凌介くんだ」
翌日。4限目の化学が終わり机の上を片付けていれば、廊下から顔を覗かせる凌介くんを見つけて駆け寄る。
「まだ佐藤さん来てない?」
「うん、5限前には来るみたいだよ」
「じゃあご飯一緒に食べない?」
「やった。お弁当取ってくるからちょっと待っててね」
<5限に間に合うように行く!>
化学の授業が始まる数分前に送られてきたメッセージ。最近まともに1限から出席していた那乃からだ。まともというよりそれが一般的なんだけども。この時間から出席するくらいならいっそ休めばいいものの、部活には参加したいから来るみたいだ。
「あー、今日は凌介と食べるの?」
「うん、那乃もいないし久しぶりに」
席にお弁当を取りに行けば、いつも通り私の席を借りる伊吹くんに声をかけられる。
「ちゃんと5限には来いよ。俺当てられても分かんねーから化学」
「うん〜わかった。もちろん戻るから安心して」
楽しい時間を、と最後に付け足され、お弁当を片手に凌介くんの元へと戻る。
「おまたせ!」
「どこで食べる?」
「んー、わたし1回屋上で食べてみたいかも」
「屋上? じゃあ行こっか」
柔らかく笑顔を見せる凌介くんに「うん」と頷いた。
ランチバッグを右手に廊下を歩く。右耳には教室内で机や椅子を移動する音、左耳には空いた窓の隙間から風に揺れる木々の音が聞こえる。