追憶ソルシエール
「寒くない?」

「ん?」

「ココアでも飲む?」

西野くんが一瞥した先には光っている自販機。


「大丈夫、寒くない」

「でも、」

「寒いのは西野くんでしょ」


急いで出てきてくれたであろう西野くんはパーカー1枚。冬の夜に長袖1枚なんて寒いに決まっている。とくに寒がりの西野くんは。


「まあそれもあるけど」

「じゃあわたしも行く」


気まずそうに肯定した西野くんと一緒に立ち上がり、自販機まで向かう。もう後をつけてた人がいないとはいえ、ひとりでここで待っておくのは怖い。さっき帰っていいよ、と言ったにも関わらず本当はまだ怖いんだ。



数十歩の距離で着いた自販機。西野くんが自販機ボタンを押す様子を眺めていれば、ん、と差し出された手。


「これ岩田の」

なかなか受け取らずに突っ立っていれば付け足された言葉。


「……ありがと」


僅かに目元に残っていた涙を拭う。かじかんだ手のひらを温めるのにちょうどいい温度。手のひらから伝わって体の奥までじんわりと温かくなる感覚。


そのまま特に会話を交わすこともなく座っていたベンチまで戻ってきた。




「少しは落ち着いた?」

お互い手に持ったココアを飲んで数分。先に口を開いたのは西野くんだった。
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