追憶ソルシエール
「うん。ごめん、急に呼び出したりして……」

私たちが最後に会ったとき、お世辞にも空気感が良かったとは言えない。険悪なムードのままそれぞれの帰路に着いた私たち。それでもここまで来てくれた西野くんには感謝しなければ。


「それはいいけど。岩田が泣くくらいって相当だと思うし」

「私泣いてない」

「泣いてたじゃん」

「泣いてないって」

「……はいはい、泣いてないね」


変わらず頑固だよね、と付け加えられた言葉は聞き逃すことにしてココアをひと口飲んだ。



「てか西野くん、」

「ん?」

「なんでアウターも着ずマフラーもつけずに来たの」


ココアに口をつけて横目でこちらを見る西野くんを問い詰めるようにまた口を開く。


「寒いじゃん」

「まあ、そうだけど」

「着てこなきゃだよ」

「急いでたから」

「それでも、」

「早くって言ったの岩田じゃん」

「…………ごめん」


何も言い返すことができない。まさにその通りすぎる。

あのときなんて言ったか正確には覚えてないけれど、ただただ早く来てほしいって思っていた。



数年ぶりにかけた電話。番号が変わっているかもしれないと頭の片隅にありながらも変わっていないことを願っていて。


「心配だった」

真っ直ぐに見つめられて、射抜かれたかのように逸らすことができない。
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