追憶ソルシエール

「あの場で元カノです、なんて紹介したら気まずいでしょ」



俺も、岩田も、由唯も。



続けられた言葉に、「……そうだね」と喉の奥から必死に言葉を振り絞る。







彼は────西野くんはぜんぶ知っていた。


わたしの名前も、中学生のときの関係も、何もかもぜんぶ。




俯いて、下唇を噛んだ。

わたしが覚えてることを、西野くんも覚えていたのにすべてが余裕そうだった。まるでわたしのことなんてほんとうにただのクラスメイトだったかのように、動揺する素振りなんてひとつたりとも見せなかった。




昨日から、わたしだけが動揺していて、ずっと頭の中が占領されている。それが悔しくて。


だから────、




「……いるよ」


俯いていた顔を上げて、視線を交わらせた。





「彼氏、いる」


静かに、でもたしかに言葉を紡ぐ。

瞳が少し揺らめいたように見えたのは、きっと気のせいだと思う。瞬きをしたらいつも通りの表情に戻っていて、すう、と視線が逸らされた。




「へー、よかったね」

抑揚のない単調な声が鼓膜を揺らす。
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