追憶ソルシエール
「てかよく世莉答えられたよねー、あたしなんて不意打ちに当てられたら絶対無理だわ」
お弁当をいつもより早く食べ終え、那乃と廊下を並んで歩く。凌介くんのところに行くと伝えたら、那乃も同じクラスの子に用事があるみたいで一緒に向かう最中のこと。突然、那乃は2限の数学の話題を持ち出した。
「実はわたしもどの問題か分かんなくて、伊吹くんに教えてもらったんだよ」
「え、そうだったの?」
パチパチと転瞬を繰り返して驚いた顔を見せたのち「へぇ〜」意味深な笑みを浮かべる。この笑みはなにか企んでいるに違いない。
「……なに?」
不自然に口角を上げて宙を見上げる那乃に訊ねれば、「べっつに〜?」と交わされる。
那乃のことだ。これまでの傾向からして、どうせくだらないことでも考えているんだろう。
「あいつもやるなあって思っただけ」
「那乃が考えてることは多分はずれてるよ」
「いーや、あたし勘はいいほうなの。ぜったい世莉に気あると思うな」
「ほら、またすぐそうやって恋愛に結びつけようとする」
やっぱりそうだった。芸能人の熱愛とか、何組の〇〇と〇〇が付き合い始めたとか。恋バナが好きらしい那乃は、どこから仕入れたのかそういう類いの情報をいち早く入手してくるけど、まさかわたしもその標的にされてしまうとは。