追憶ソルシエール
「返すのはいつでもいいよ」
「わかった。じゃあ部活行く前にここ来るよ」
「うん、英語がんばって!」
「ありがと。世莉ちゃんも」
じゃあね〜と手を振って席に戻れば、伊吹くんが何か言いたげに視線を向けてくる。
「……どうかした?」
「さっきのって佐田だよな?」
「うん、そうだよ」
それがどうしたんだろうかと考えていれば、「いーの?」と心配そうな声色に変わる。
「なにが?」
「話聞こえたんだけど、俺らも5限に英語あるから」
「えっ、今日英語あったっけ?」
「時間割、変更したらしいよ」
伊吹くんの指が背面黒板に向けられる。そこには5限が化学から英語に変更されたと書かれていて。
「ほんとだ、どうしよう。返すのいつでもいいよって言っちゃった」
「岩田そういうとこあるよなー、頭いいのになんか抜けてる」
「似たようなこと那乃にも言われた……」
視線を落とせば、ははっと笑われた。「やっぱ誰でも思うこと一緒なんだなー」となにやら感心している様子。
短い休み時間も残り数分。ガラガラと音を立てて次の授業担当の先生が怠そうに入室してきた。
「まあいいんじゃね? お昼終わったあとに行けば」
次の授業の教科書を机から出しながら、「そうする」と頷いた。