毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
「〝フィーリア・ウィーティス〟は精霊族の王国とシュテルンベルク王国だけに自生する、貴重な妖精植物なの。もともとは精霊族の王族がシュテルンベルク王国の妃殿下に贈ったものが、自生するようになったと言われてるわ」

 淡く光り輝く薔薇に似た花弁と蔦が特徴の妖精植物だ。魔力を多く含んだ土地だけで育つ。
 開花するまでには五年以上かかり、我が家の温室にあるものは私が二歳の時にお母様が植えたものだった。

『楽しみね、ティアベル。あなたが七歳になったら、妖精さんが生まれるわよ』
『ようせいさん?』
『ええ。この妖精植物はね、妖精さんが生まれる珍しいお花なの。どんな子が生まれるかしらね? 生まれる時にはたくさんチョコレートを作って、お母様とお父様と一緒にお世話をしましょうね』
『うん!』

 ――そんな会話をお母様としながら、温室で過ごしたのを覚えている。
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