毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
 脳裏に浮かんだ懐かしい光景に、少し鼻がツンとして瞳がうるっとしてきたけれど、私は唇を微笑みの形にした。なんと言っても待ちに待った開花だ。

「〝フィーリア・ウィーティス〟は蕾が開く時に、妖精が生まれると言われているの。その時に魔力の源となる甘いお菓子を与えなくちゃいけないんだけど、我が家ではチョコレートをプレゼントしたいのよね。チョコレートが一番魔力が強まるみたいなの」

 それに〝フィーリア・ウィーティス〟は、甘いお菓子の中でも特にチョコレートに目が無いらしい。
 別名〝ショコラの妖精〟と呼ばれているくらいだ。

「魔力の源がないと、〝フィーリア・ウィーティス〟は(つがい)がわからなくなってしまうんですって」

「なるほど。生まれる瞬間に立ち会い、魔力の源となるチョコレートを与えるのが、旦那様から託された役目というわけですね」
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