毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
「その通り! お母様ならきっと沢山の種類のチョコレートを用意すると思うわ。……こうしちゃいられないわね。まずはチョコレートの材料を買いに行かなくちゃ!」

 開花に間に合うように作らないと、と私はパタンと『妖精植物事典』を閉じる。

「アルトもチョコレート作り、手伝ってくれる? ちょっと大変かもしれないんだけど……」
「僕はお嬢様の従僕です。お嬢様のお望みのままに、すべてをお手伝いいたします」

 アルトバロンは無表情だった氷の美貌に、雪解けのようなやわらかな微笑みを浮かべる。

「ありがとう」

 ということで、私たちは〝ショコラの妖精〟にプレゼントするチョコレートを作ることになった。


 ◇◇◇

 冬用のもこもこコートを着込んで、馬車に乗ってディートグリム公爵領で一番大きな街に向かう。
 久しぶりに訪れた街は、ハートのオーナメントにあふれていた。
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