毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
 しかも愛玩動物でも、魔道具でもなく、獣人だなんて。いくらなんでも人道に反しすぎだ。

 魔獣や動物の身体的特徴を持っている獣人という種族は、人間よりも魅惑的な容姿をしており、身体能力がとても優れていると言われている。
 しかし人間にも美しい者はいる。身体能力が獣人のそれに及ばずとも、代わりに魔力操作や技術で優れている者が多いことからも、ふたつの種族間に上下関係はないに等しい。

 この国における獣人の印象は、少数派の種族という程度である。
 互いの文化的な隔たりや多少の亀裂はあれど、人間と同じように生活しているのだ。
 だからこそ、この状況は変だった。

 まあ、単純に、年頃の近い彼が働き口を探していて、私専属の従者として選ばれたと思えば……なにも問題はないのかもしれない。
 だが、彼の優れ過ぎた容姿や足の運び方などの仕草を見ても、彼が公爵令嬢の使用人になるような身分であるようには、到底思えなかった。
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