毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜
 そんなことを考えていると、しびれを切らしたお父様が、暫定『誕生日プレゼント』くんの肩を押し出す。
 その絵面は完全に大人の色気大爆発の死神様と、敵に捕まったが頑張って強がっているプライド高めな孤高の美少年と言ったところか。

「……ま、まさか誘拐? それとも人身売買!?」

 周囲の使用人たちを見回すが、誰も眉根すら潜めていない。それどころか、みんな普段より誇らしげにしているではないか。

「えっ、なぜ? 我が家はいつの間にか、獣人を売買するような悪事にどっぷり手を染めていた……?」
「ティアベル。獣人族、精霊族を含む人身の売買は王国法第八十一条で禁止されている。さすがの私も、その領域には手を出さぬ」
「さすがの私もって、他に一体なにをやっているのですかお父様……」

 驚きと心配で震えながら、改めて目の前に立つ美少年を見上げる。

「は、はじめまして。えーっと、ご機嫌いかが?」
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