あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています


***

 
みんなで泊まり込んで描き進めたおかげか、なんとか日曜の午後に月刊誌掲載用の作品は仕上がった。
みんなクタクタだが、完成すると和花まで嬉しくなってくる。
担当編集者も満足のいく出来だったらしい。
編集者のオーケーがでると佐絵子は自分の家に帰り、大翔とアシスタントの三人は爆睡してしまった。

部屋をざっと片付けてから和花はそっとマンションから出た。
その足で、和花は母親の入院している病院へ向かう。

和花の両親はひとりっ子同士の結婚だったから、親族が少ない。
だが母が入院している岸本病院の院長は母の又従兄妹(またいとこ)なので父が亡くなってからも、とてもよくしてもらっていた。

和花が休日用の通用口から院内に入ると、顔なじみの守衛さんから声を掛けられた。

「お見舞いかい?」
「はい」

毎週日曜日に交わされる、お馴染の会話だ。

「お大事にな」
「ありがとう」

母の具合が悪いのを知っているのか、気を遣ってくれているのだろう。



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