大切なあなたへ
志穂はカウンターへとゆっくり歩き出す。
どうやら、カウンターの中にも誰も居ない様だ。
志穂がカウンターの前に立つと、奥から人が出て来た。
「あれっ、志穂ちゃん…」
志穂を見て驚いているのは、この店の店長で、一也の兄の一馬だった。
『今晩は、この間はご招待頂き、ありがとうございました』
志穂は笑顔で一馬に頭を下げた。
「この間はろくに話も出来なくて悪かったね。
また来てくれて嬉しいよ。
それにしても…、志穂ちゃん、今日は随分雰囲気が違うね。
一瞬、誰だか分かんなかったよ。
まっ、座ってよ」
志穂はカウンターに腰を下ろした。
そして、ゆっくりと店の中を見回し、
この間のパーティーを思い出していた。