季節は巡り、それでも貴方を想う
~プロローグ~

外で食べるおにぎりって、どうしてこんなに美味しいんだろう。春の光を受けて、お米の1粒1粒が艶やかに輝いている気がする。

「外で食べるとどうしてこんなに美味しく感じるんだろうね」
おにぎりを頬張りながらそんなふうに感動していると、心の中で思っているのと全く同じセリフが聞こえてきた。

声の主は友達の陽梨だ。
レジャーシートにきちんと正座した陽梨は、三角形のおにぎりを両手で大切そうに持って口に運んでいる。
「だよね!わたしも今、ちょうどそう思ってた!」
偶然同じことを考えてたなんて、なんだか嬉しい。うんうん、と大袈裟に首を振るわたしに陽梨はくすりと笑って言った。

「ね。別に特別なお米で作ったわけじゃないのにね。この現象に名前ってあるのかな」
「うーん。……『外で食べるご飯美味しい現象』?」
「ふふっ、一花。そのまますぎだよ」
陽梨の笑顔がさらに弾けて、つられるようにわたしも笑う。

顔を緩ませながら考える。きっと、『外で食べるご飯美味しい現象』と同様に、『友達と一緒に食べると美味しい現象』なんて言うのもあるんじゃないかって。
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