砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
前を走っていたランクルから、あたしの「夫」が降りてきた。
もう頭巾と貫頭衣ではなく、グレンチェックのブリティッシュスタイルのスリーピースだった。
少しうねりのある漆黒の髪に黒曜石の瞳の人が、半端ない目力で、あたしをまっすぐに見つめる。
もう結婚しちゃったあとだけど……
——あたしも……ファティマさんのように、この男と……これから、恋をするのかな?
そして、この男も……ムフィードさんのように、これから……あたしに恋するのかな?
「おいで……私の真珠」
また、車中でムフィードさんから日本語を教わったのだろう。
「ラジュリー……」
彼に向かって右手を伸ばす。
左手はこの地では「不浄」の手だから、差し出してはならない。
花嫁衣装のカフタンドレスを着たときに、あたしの腕から手の甲そして指にかけて、美しい蔦の紋様が染料で描かれた。
紋様はその家系ごとに違うらしく、この図柄はラジュリーの家で代々伝わるものだと、ファティマさんが教えてくれた。
ヘンナで肌が荒れるということは、まずないそうだが、これから二週間ほどはいくら洗ってもこの色は落ちないそうだ。
あたしの手の甲から指にかけての蔦模様を、彼が見つめる。
その目にまるで吸い込まれるかのように、あたしは彼に駆け寄った。
「さあ、行こう」
彼の力強い右手があたしの腰に回って、ぐいっと引き寄せられる。
すると、そのとき——
「……真珠ちゃん」
不意に声がして、あたしとラジュリーは振り向いた。
さらりとしたブラウン系の髪に、ぱっちり二重の赤褐色の瞳の人が、ライトグレーのスリーピースをぴしりと着こなして、こちらに颯爽とやってきた。
「えっ……どうして……ここに……?」