砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
彼は何事にもいっさい臆することないように堂々と真正面から、じっとあたしたちを見ていた。
日本人と違って外国人は目を見て話すのが基本だが、それにしても彼の目力はハンパなかった。
その黒い瞳以外にも、うつくしく整えられた濃い眉やすーっと一筋通った隆鼻に、彼の「意志」のようなものが感じられる。
——ムフィードさんにはあまり感じられなかった「圧」だけど、ガチのアラブの男の人ってこんな感じなのかなぁ……
しかし、精悍そうに見える浅黒い肌には、イスラム教徒の成人男性にしてはめずらしくヒゲがない。
そして、この地域特有の湿気を含んだ蒸し暑い気候にもかかわらず、グレンチェックのブリティッシュスタイルのスリーピースをきっちりと着ていた。
(まぁ、室内はガンガンに冷房効いてるけれども……)
日本人男性よりもしっかりとした彼の骨格に、ぴったりと沿ったカッティングが施されているそのスーツは、見るからに上質そうな生地だ。
「صاحب السمو أمير」
ムフィードさんが彼に話しかける。
「السلام عليكم」
彼がムフィードさんに目を移して答えた。
「والسلام عليكم」
小声でもよく響く低音だった。
——うっわー、この男見た目だけじゃなくて、声まで「イケボ」じゃん。
「كيف حالكم؟」
「أنا بخير بفضل الله」
「الله أكبر」
「وأنت؟」
「أنا بخير بفضل الله أيضًا. بالمناسبة ، هناك شخص أود أن أقدم لكم」
「إن شاء الله」
だけど、なにをしゃべってんのか、さっぱりわかんないわ……