砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

「ど、ど、どこが……?」

どこの世界に「第一夫人」を飛び越えて「第三夫人」にするのが「優しい」と思える国があるのか?

——いや、この国……というか、ムスリム社会がそうなの?


「ムスリムの妻、一番目はfamily(親族)です。
子どものとき、父親がcousin(いとこ)に決める、とても多いです」

日本でも昔の旧家にあった、いわゆる「許嫁(いいなずけ)」ということだろう。

「二番目はこれから仲良くしたいclan(一族)です。
昔戦いのあと、敵のclanの娘はsacrificeでした」

——ひいぃっ!
『sacrifice』って……生贄(いけにえ)じゃんっ!

つまり、家同士の仲直りのための「政略結婚」に差し出される生贄ってことだ。

「なので、自分で妻を決めるは三番目と四番目です。
同じムスリムは良いですが、違うでも一番目と二番目でないなら……」

「異民族な上に異教徒な女は、相手の父親から『第一夫人』や『第二夫人』としては認めてもらえないけど、三番目以降なら認めてもらいやすいというわけね」

ムフィードさんは大きく肯いた。


彼が言いたかったミスター・マーリクが「優しい」っていうのは、あたしが「第三夫人」であれば、わざわざイスラム教に改宗しなくてもいい上にマーリク氏の父親から認められやすくなる、ということなんだろう。

特に、彼らにとっての「父親」というのは、ものすごーく厄介そうな存在だ。

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