青い夏の、わすれもの。
風が凪ぎ大海原を見つめる時、

人と人の間にはまた新たな風が吹く。


しばらく泣いていたけれど、優しい潮風に吹かれているうちに心が冷静さを取り戻した。

私はずっと隣で見守ってくれていた朝吹くんに謝った。


「ごめんね。また迷惑かけちゃった」

「ううん。全然大丈夫。それより深月さんの方は大丈夫?」

「わたしは...うん、もう大丈夫。泣いて色々踏ん切りが付いた。今この瞬間から次に行ける気がする」


私がそう言って隣の彼を見ると、視線が交わった。

私が慌てて反らすと彼はすっと立ち上がった。

私の目の前に来て腰を折り、同じ目線に彼が現れた。


逃げられない...。

捕獲されてしまった...。


私はただならぬ何かを感じて、息を飲んだ。

その直後だった。


< 184 / 370 >

この作品をシェア

pagetop