青い夏の、わすれもの。
彼はわたしの言葉にお腹を抱えて笑った。


「はっはっは!はーはっはっは!何君?面白すぎ!はっはっは!あ~はーはっはっは!」


先輩方が大音量で演奏しているから聞こえていないのを良いことに大声で笑っている彼にわたしは心底腹が立った。


「なんで笑うんですかっ?!」


頬を膨らませると、彼はわたしの頬をつねってきた。


「あいたたた...」

「オレ、"だいがく"じゃないから。"だいらく"だから」

「えっ?」


そっか。

わたし、名前を間違えるという失礼極まりないことをしてしまったのか。

わたしは潔く頭を下げた。


「大変申し訳ございませんでした」

「いや、別にそこまでしなくても...」


そう言われたからだと思う。

わたしはこの人なら大丈夫だと安心し、余計な思考回路を辿って意味不明なニックネームを生成してしまったのだ。


「あのぉ、改めまして山本澪です。そちらは大楽律くんですよね?さつまくんって呼びますね」

「は?」


"呼んでもいいですか?"じゃなくて、"呼びますね"、とはっきり言えてしまったあの時のわたしは本当にすごい。

まるで別人が話しているみたいだった。


「とにかくよろしくお願いします。さつまくん」


その日のことは色濃く脳裏に焼き付いている。

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