青い夏の、わすれもの。
それは2年前の5月下旬のことだった。
ようやくパートが決まったのだが、わたしは希望していたサックスになれず悔しさを滲ませながら毎日マウスピースだけの練習をしていた。
いや、厳密に言うと、"させられていた"、のだ。
先輩はちっともわたしに楽器を使わせてくれなかった。
毎日ブーブーブーと豚の鼻息のような音ばかり鳴らして心底飽き飽きしていた時に、彼の音が鼓膜を震わせた。
――パーーーーーッ!
なんの迷いもない真っ直ぐ過ぎる音。
芯が通ってて全くぶれないB♭(ベー)はわたしの心臓のど真ん中を貫いた。
わたしもこの音を目指そうと思った。
先輩方が大会曲の合奏をしている間、わたしはこっそり1年1組を抜け出し、3組の窓からひょっこり顔を覗かせた。
気付け気付け、気付け~と念を送ると、数秒後にラッパがこっちを向いた。
わたしがニタニタと笑っていると彼が近寄ってきてドアをガラガラと開けた。
そして、一言。
「何か用ですか?」
その言葉にわたしは正直に無愛想な人だな、という感想を抱いた。
まさに音楽やってる男の子という感じの中性的な可愛らしさと凛々しさを兼ね備えた魅惑的な見かけなのに、中身はちっともイケてないな、なんて誠に失礼ながら思った。
だけど、なんだか引かれてしまった。
この人の音の秘密を知りたい。
そう思ってしまった。
そして、勢い良く言葉を発してしまったのだ。
「お願いします!大楽(だいがく)くんの弟子にして下さいっ!」
ようやくパートが決まったのだが、わたしは希望していたサックスになれず悔しさを滲ませながら毎日マウスピースだけの練習をしていた。
いや、厳密に言うと、"させられていた"、のだ。
先輩はちっともわたしに楽器を使わせてくれなかった。
毎日ブーブーブーと豚の鼻息のような音ばかり鳴らして心底飽き飽きしていた時に、彼の音が鼓膜を震わせた。
――パーーーーーッ!
なんの迷いもない真っ直ぐ過ぎる音。
芯が通ってて全くぶれないB♭(ベー)はわたしの心臓のど真ん中を貫いた。
わたしもこの音を目指そうと思った。
先輩方が大会曲の合奏をしている間、わたしはこっそり1年1組を抜け出し、3組の窓からひょっこり顔を覗かせた。
気付け気付け、気付け~と念を送ると、数秒後にラッパがこっちを向いた。
わたしがニタニタと笑っていると彼が近寄ってきてドアをガラガラと開けた。
そして、一言。
「何か用ですか?」
その言葉にわたしは正直に無愛想な人だな、という感想を抱いた。
まさに音楽やってる男の子という感じの中性的な可愛らしさと凛々しさを兼ね備えた魅惑的な見かけなのに、中身はちっともイケてないな、なんて誠に失礼ながら思った。
だけど、なんだか引かれてしまった。
この人の音の秘密を知りたい。
そう思ってしまった。
そして、勢い良く言葉を発してしまったのだ。
「お願いします!大楽(だいがく)くんの弟子にして下さいっ!」