秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
危ないとか、逃げなきゃとか、そういった危険信号を頭の中では理解しているのに、どうしても体が動かない。
おそらくこの女性は拓海のストーカーだろう。拓海の話では事務所が対応してくれているということだった。
だから安心していた。こんな白昼堂々と現れるなど想定していない。
そして彼女はゆっくりと鞄から銀色に光るナイフを取り出す。
「調べました…ようやく雇った探偵が調べてくれて…ダメですよ。彼を取らないでください。拓海さんと一緒になれないのはあなたがいるせいなの」
彼女は青白い唇を震わせ近づく。
タクシーの運転手が気づいてくれて、警察だろうか電話をしながら車を降りてきてくれる。
けれど、彼女の目には私しか映っていない。
恐怖で戦慄く私の体は後ずさることも走ることもできずにいる。
タクシーの運転手が声を張り上げる。
「や、やめなさい!」
他人の声は聞こえていないのだろう。彼女は私しか見ていない。
そして、にっこり笑うと私のもとへ走る。走馬灯がよぎり、すべてがスローに見えるのに私は逃げることが出来ずにガタガタと震えながら拓海の名前を呼んでいた。