秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
叫びながらこちらへ走ってくる彼女に私は尻もちをついて声にならない声を出していた。

ギュッと目を閉じて、反射的に腕でガードして…―
「っ…」

それでも突如感じる熱に顔を歪め、辺りが騒がしくなった。
叫び声が彼女の声なのか通行人のそれなのかは判断がつかない。

「許さない!」

その声と同時に更に強い痛みが走った。
死を覚悟した。やり残したことはたくさんある。でも、やっぱり浮かぶのは拓海の顔だった。
アスファルトの上倒れこむ私はうっすらと目を開けた。

青空と流れるように動く雲が視界に入る。
ゆっくりと呼吸をした。
誰かが私の体を揺らして「大丈夫ですか!」と声をかけてくれる。
タクシーの運転手だった。
頷くのがやっとで、自分がどこを刺されたのかわからないけど、あの彼女はどこへ行ったのだろうと狭い視野を必死に広げる。

「マサト…さん?」

女性を抑えていたのは、マサトさんだった。
必死に抑えている彼は、手から血が出ているように見えた。

意識があったのはここまでだった。
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